そうして人間

こよなく愛する術もなく

到着限界合戦

寝て起きるとまた不幸だ、不幸は外側から降って来る。人間の森から逃亡し、一人さまよっていても次第に飽きてきてまた森へ戻ると居場所はとても小さくなっている。しばらくするとまた逃亡し、戻ってくるとさらに小さく、これを繰り返していると一人分の足場程しか居場所は無くなり、他は絶壁、落ちたらどこへ行くのだろうか。

顔を見るのも嫌になり、吐き気はするし体はうずうずとして今にも走り出しそうで必死に堪えて今日を終える。そういう毎日を繰り返して明日も生きなければならない。はやく肉体から脱出して魂だけの存在になり、光のうちに消えたい。明るい方へ飛ぶのは走光性があるからだ、虫だ、魂がいつか焼き切れて落ちるまで走り続けなければならない。

先天性で生まれ持ったものは少なく、似てないなと言われれば嬉しく、変わってるねと言われれば頑張った甲斐があると思い、そうして褒められる方を探している。そのままずっと生き続ければいつかは身バレして、隠していた布の中には何もないことが分かり、呆れられて去って行くことを何人も見てきたので、そうしたことが一番私にとって効く、つまり治療の方向はこちらなのではないかと思う。

隠さなければいけないことなんて一つもなく、犯罪者でもないのに人と目を合わせられず、下ばかり向いて歩いているので、よく肩にものをぶつける。ふと前をみると、自分が下を見て歩いていたことに気づく、既に無意識になっていた行動に、空が意外に青く、町には人がいて、知り合いだと思っていた顔は全く似ていなく、別人であることに恥ずかしいと思う。目が悪い、こだわっている場所がくだらない。

憂鬱の実はもうとっくに治っていて、私は私のためだけにこうしているのだと思う。自分の楽しさだけでこれまで、自分がネジ一本分の働きすらできないことを重荷に思い、ただそれだけなのだと思い、事実が事実としてちゃんと受け止められ、どこへも行けるのにどこへも行かないのは、自分を罰しているからじゃなくてただ単に全く全てのことが面倒で、面倒でしょうがないだけ。ここにもうすぐ尊厳や意思ややる気など死滅してしまったものが少しでもはやく生き返るように、私は早く起きて、起きて歩いて、自分で決められるようにならなければ、未来なんて何もないのだなと、せめてもう一握り残っていた恥を使って、でなければいけない世界、に早く戻ってこないといけない。辛いからじゃない、寂しいからじゃない、こんなものは何でもなく、誰かと比べてもどうしよもないけれど、一人の人間として生まれてしまった後悔を最後までやり切らなきゃいけないのだと、積み重ねてきた罪を思う。生きることはとても後ろ向きだ、後ろ向きでも実は前に進めることを、誰かと私は話すことができる、それは幸せかもしれない。不幸は外側から降って来るが、幸せも外側からしか降ってはこないことを、もっと早く自覚すべきだ。だって私の中はからっぽで何にもないのだ。